注目! パナソニック電工 「モディファイ」 声高に存在を主張するのではなく、 さりげなく馴染み、佇んでくれる高度なデザイン

人の気持ちをくつろがせてくれる 光の空間をデザイン

ミラノの中心部、ブレラ美術館付近の小路を辿っていくと、ごつごつした小石を並べた路地沿いに、可愛い風情のリストランテやバールが軒を連ねるSan Carpofora通りに行き着く。
そこに面した空間で、パナソニック電工の展示が行われていた。ガラス張りの入り口は、さほど間口が大きくないのだが、中に入ると天井が高く奥が深い。

空間は手前から奥に向け、大きく三つに分かれているのだが、それぞれ独自性を主張しながら、全体として確かなまとまりがある。

私にとってのデザインとは、見た目のフォルムや質感、あるいは機能といったスペックや美しさだけではないと、常日頃から考えてきた。
モノとヒト、空間がかかわることで、どんな気分やシーンが生まれるのか。そこまで含めた総体こそが、本来的な意味で、“使い手から見たデザインだ”ととらえてきたのだ。

ひとつは、25年にわたって続けてきた“まち・みせ・ひとのトレンドが最も早い段階で現象化すること=ファッション”という視点だ。この文脈において、“素の状態で見たサローネの有り様”について、感じたことを綴ってみたい。

その視座から言えば、パナソニック電工の展示空間は、まさにモノと空間が一体となって、ヒトとのかかわりを感じさせてくれる――私が言うところのデザインが明快に感じ取れる場でもあった。
それは、展示テーマである(standard)3が体現していたことでもある。「暮らしの本質をとらえ直し、スタンダードとなる商品群を空間化(立体=三乗)して提案する」が、きっちり表現されていたからだ。

最初の二室で展開されていたのは、パナソニック電工とプロダクトデザイナーの深澤直人氏ががっぷり組んで作った、新しい照明シリーズ「MODIFY(以下、モディファイ)」だ。

最初の部屋では、円球状の照明が等間隔で配されている。手前から奥に向けて、徐々に高さを上げて天井から下げられた照明の群れは、通りから見た時、簡潔でありながら心くつろがせてくれる、独自性の強い景観を提供している。


そして二室目は、「モディファイ」の3つのデザインバリエーションと、それぞれのサイズバリエーションが、9個をひとつの単位として展示されており、こちらも高低を付けた展示が、空間全体にリズミカルな光を生み出し、商品のポイントを明快に伝える場になっていた。


そして、一番奥の部屋は、LEDが入った「モディファイ」と、パトリシア・ウルキオラ氏がデザインしたマッサージチェアの新作が置かれている。ゆったり漂う光の中、洗練された雰囲気のモダンなマッサージ・チェアに身をゆだねてみることができるように設えてあるのだ。

一方、側面にはパナソニック電工の技術力について、簡潔で丁寧な説明がなされていた。
こういった展示をしているところは、国内外を問わず少なかったのだが、来場者たちが熱心に眺めているのが印象に残った。

マッサージチェアと言えば、スペックは完璧なのだがインテリアに馴染まないという印象が強いアイテムのひとつ。それが、すっっきりしていながら機能が充実した新シリーズが置かれていた。「これなら我が家に一台欲しい!」と思わせてくれるデザインだ。

 


会場のテーマは「リラックス」。幻想的な“光の森”をイメージしたという空間は、まさにヒトの心と身体をくつろがせてくれる。建築家であるマルティノ・ベルギンツ氏によるデザインは、さりげないながらも人の気持ちを動かしてくれる。

訪れたのは、パーティーが始まる前の午後5時頃のこと。徐々に暮れなずんでいく空間の中で、浮遊するように光を発している「モディファイ」が美しい。会場の中に身を置くと、柔らかい光が身体を包んでくれる。
パーティーが始まって、身動きならないほどヒトが集まってきても、不思議と居心地がいいのは、照明がヒトに与える気分なのだろう。

後から考えると、かれこれ3時間弱は混雑した会場にいたのだが、楽しく過ごせたのは、集った人たちとの会話はもちろんのこと、全体を包んでいたリラックスした空気感に拠るところが大きい。
光とは目に見えないデザインでありながら、実は心に大きく働きかけるものであることに、改めて感じ入ったのである。

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パナソニック電工・岡井理恵氏

「出展ブースのポイント」
パナソニック電工・岡井理恵氏

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Profile | プロフィール

川島 蓉子<かわしま ようこ>

1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科終了。1984年、伊藤忠ファッションシステム株式会社入社。ファッションという視点で消費者や市場の動向を分析している。Gマーク審査委員。
読売新聞で「マイスタイル」という週刊コラムを連載。その他、MJ、繊研新聞、朝日新聞、ブレーンなどに定期的に寄稿。著書に「おしゃれ消費ターゲット」(幻冬舎)、「TOKYO消費トレンド」(PHP)、「ビームス戦略」(PHP)、「伊勢丹な人々」(日本経済新聞社)、「松下のデザイン戦略」(PHP)、「上質生活のすすめ」(マガジンハウス)、「ブランドのデザイン」(弘文堂)、「TOKYOファッションビル」(日本経済新聞社)、「資生堂ブランド」(アスペクト)、「フランフランの法則」(東洋経済新報社)、「川島屋百貨店」(ポプラ社)、「虎屋ブランド物語」(東洋経済新報社)、「イッセイミヤケのルール」(日本経済新聞社)などがある。

原久子のMILANO SALONE 2009